「ひろしま夏の芸術祭 メインコンサート」の最後を飾ったのは、琴庄神楽団「厳島」。この演目は、厳島神社の起源や歴史を基に、平清盛とその妻、時子(二位の尼)を中心にした物語です。いつも見慣れた演目と違って、創作神楽となると物語を理解するためにはセリフが重要なポイントになってくると思います。この「厳島」はそのセリフが多く、中にはとても長いものもあるため、まずは聞き取ることに集中された方もおられたことでしょう。しかし当日のパンフレットには、なんとこの「厳島」の台本が掲載されていました。ファンのみなさんにとって神楽の台本を見るというのは滅多にない機会だと思いますが、これによってこの演目をより深く楽しむことができたのではないでしょうか。それではご紹介していきたいと思います。

「波の下にも都は候ぞ…」 …二位の尼の悲痛な声が響きます。ドドン、ドドドドドド…。瀬戸内海の激しい波を思わせる太鼓が続き、舞台はドライアイスと青い照明で海が再現されました。その海に浮かぶかのように二位の尼が登場し、ゆっくりと語り始めます。壇ノ浦の決戦で源氏に破れた平家一族。二位の尼は幼き安徳天皇を抱いて波の下に都を求め、海に沈んだと伝えられています。そしてその亡骸は厳島へと流れ着き、その場所には二位殿灯篭という石碑が建てられています。時に寂しげ
に、時には怒りを表しながら、ゆっくりと噛み締めるように語っていく二位の尼。その感情に同調するように笛の音が鳴り響き、物語序盤の重要な場面を見事に表現されていたように思います。

壇ノ浦の決戦から遡ること約六百年。市杵島姫(いちきしまひめ)、湍津姫(たぎつひめ)、田心姫(たごりひめ)ら三人の女神が瀬戸内海を訪れます。須佐之男命を父として生まれたこの三女神(さんじょしん)は、自分たちが鎮まる地を求めていたのです。そして佐伯鞍職(さえきくらもと)という人物が登場し、三女神を厳島へと案内します。この佐伯鞍職は厳島に住んだ豪族で、593年に厳島神社を創建して初代神主になったと伝えられています。こうして鞍職が先導して三女神との四人舞が始まりました。舞台を静かに回り、あるいは縦横に交差したりと、奏楽も含めて儀式舞のような印象を受けました。そして所々で「あれに見えしは…」と名所を案内します。日本三景の一つに数えられる絶景に感動した三女神は、遂にこの地に鎮まるのでした。決して派手ではありませんが、非常に興味深い場面でした。

再び舞台は平安時代。平清盛と妻時子(二位の尼)、清盛の四男知盛(とももり)が登場します。「平家にあらずんば人にあらず」と言われた平家一族の全盛期を築いた平清盛は、先ほどの三女神ら厳島大神を崇め、厚く信仰します。厳島神社を参拝した清盛一族に対し、厳島大神は清盛の願いを聞き入れ、加護すると告げます。そしてここで前半の大きな見せ場が。大神の加護を受けた清盛は、沈みかけた太陽を扇の舞で再び呼び戻すと宣言。両手に持った扇を勢いよく開くと、天を見据えて力強く、そして躍動感溢れる舞で必死に太陽を仰ぎます。両手をいっぱいに広げながら、渾身の力を込めたその舞に、思わずイスから腰が浮き上がってしまった方もおられたのではないでしょうか。実にエネルギッシュなその姿は、岩戸から天照大神を呼び出す際の手力男命が重なって見えました。ただ一つだけ個人的に言わせていただければ、せっかくの舞手さんの熱演
ですから、照明などの舞台装置で、太陽が再び戻ってくるような演出があればより盛り上がったのでは…と思いました。

続いて花道から静かに登場したのは陰陽師である安倍泰親(あべのやすちか)。原因不明の病に倒れた清盛を救うため、京の六波羅(ろくはら)にある屋敷へと向かいます。これまでは穏やかな物語が続いていましたが、ここから一気に恐ろしい展開に。清盛を苦しめているのは、清盛が今まで負かしてきた政敵たちの怨霊だったのです。舞台のあちこちから立ち昇るスモークに、うなされながら刀で切り付けようとする清盛。泰親は陰陽の術で怨霊の姿を暴きます。照明が落とされ、低く不気味な声が会場に響き渡りました。「清盛ぃ~…」 三人の怨霊が清盛を地獄に引きずり込もうと近寄ってきます。何と言う恐ろしさでしょうか。ヒュ~ドロドロ…と聞こえるような奏楽も効果抜群。
泰親は知盛の加勢を受けて怨霊に立ち向かいます。ここは広島神楽の合戦の見せ場、大いに盛り上がりました。しかし積もる恨みを晴らそうとする怨霊たちは、しぶとく清盛に襲い掛かります。最後に泰親は陰陽術でようやく怨霊たちを追い払います。舞台に残されたのは、もはや息も絶え絶えの清盛。しかし最期の言葉は、自分が厚く信仰した厳島大神に向けたものでした。「御身(おんみ)らの加護ありて、我が志(こころざし)、永久(とこしえ)に語り継がれるべし。」と遺し、ついにその生涯を終えた清盛。後半の大きな見せ場が終わりました。

その直後、勇ましい奏楽と共に再び幕が開きます。清盛の死から4年、壇ノ浦。二位の尼が登場し、平家一族の命運もこれまでと悟り、自ら海へと身を投げます。ドドドドド…。冒頭の場面を思わせる雰囲気で、波に飲まれるような舞、そしてゆっくりと倒れ込む二位の尼。切なげに鳴り渡る笛が始まり、幕が開くとそこには、厳島の大鳥居をバックにたたずむ清盛の姿が。ゆっくりと立ち上がった二位の尼は、清盛の元へと向かい、静かに幕が閉じました。

三女神の一人、市杵島姫は「神霊を斎祭る(いつきまつる)島」という意味を持っていることから、「いつきまつる」…「いつくしま」と呼ばれるようになったと伝えられています。また「厳島」のクライマックスにおいて、平時子は「慈(いつく)しみ 夫婦互いに思い馳せ 想い重ねる 朱(あけ)の鳥居よ」と歌い、夫、清盛の元に身を寄せます。普段はおそらくほとんどの方が「宮島」と呼ばれていることと思いますが、「厳島」の背景にはこんな物語があったんですね。「平家物語」など歴史の影響か、いいイメージで語られることの少ない平清盛ですが、海外との貿易に力を入れ、国の繁栄を図ったという一面も忘れてはなりません。何より広島に住む私達にとって、世界遺産にまでなった厳島神社を崇め、今日まで残した功績はもっと多くの方に知ってもらいたい事だと思います。逆に言えば、広島に住んでいるからこそ、身近な観光地としての「宮島」なのかもしれませんが、この神楽をきっかけに、「厳島に行ってみようかな」など、より興味を深めていただくことが、この演目に携わった方々に向けた最高の賛辞になるのではないでしょうか。そして今回の「厳島」の上演が最後ではなく、あくまで始まりであり、今後広島神楽を代表する演目となるよう、私達ファンも応援していければと思います。


「波の下にも都は候ぞ…」 …二位の尼の悲痛な声が響きます。ドドン、ドドドドドド…。瀬戸内海の激しい波を思わせる太鼓が続き、舞台はドライアイスと青い照明で海が再現されました。その海に浮かぶかのように二位の尼が登場し、ゆっくりと語り始めます。壇ノ浦の決戦で源氏に破れた平家一族。二位の尼は幼き安徳天皇を抱いて波の下に都を求め、海に沈んだと伝えられています。そしてその亡骸は厳島へと流れ着き、その場所には二位殿灯篭という石碑が建てられています。時に寂しげ

壇ノ浦の決戦から遡ること約六百年。市杵島姫(いちきしまひめ)、湍津姫(たぎつひめ)、田心姫(たごりひめ)ら三人の女神が瀬戸内海を訪れます。須佐之男命を父として生まれたこの三女神(さんじょしん)は、自分たちが鎮まる地を求めていたのです。そして佐伯鞍職(さえきくらもと)という人物が登場し、三女神を厳島へと案内します。この佐伯鞍職は厳島に住んだ豪族で、593年に厳島神社を創建して初代神主になったと伝えられています。こうして鞍職が先導して三女神との四人舞が始まりました。舞台を静かに回り、あるいは縦横に交差したりと、奏楽も含めて儀式舞のような印象を受けました。そして所々で「あれに見えしは…」と名所を案内します。日本三景の一つに数えられる絶景に感動した三女神は、遂にこの地に鎮まるのでした。決して派手ではありませんが、非常に興味深い場面でした。

再び舞台は平安時代。平清盛と妻時子(二位の尼)、清盛の四男知盛(とももり)が登場します。「平家にあらずんば人にあらず」と言われた平家一族の全盛期を築いた平清盛は、先ほどの三女神ら厳島大神を崇め、厚く信仰します。厳島神社を参拝した清盛一族に対し、厳島大神は清盛の願いを聞き入れ、加護すると告げます。そしてここで前半の大きな見せ場が。大神の加護を受けた清盛は、沈みかけた太陽を扇の舞で再び呼び戻すと宣言。両手に持った扇を勢いよく開くと、天を見据えて力強く、そして躍動感溢れる舞で必死に太陽を仰ぎます。両手をいっぱいに広げながら、渾身の力を込めたその舞に、思わずイスから腰が浮き上がってしまった方もおられたのではないでしょうか。実にエネルギッシュなその姿は、岩戸から天照大神を呼び出す際の手力男命が重なって見えました。ただ一つだけ個人的に言わせていただければ、せっかくの舞手さんの熱演

続いて花道から静かに登場したのは陰陽師である安倍泰親(あべのやすちか)。原因不明の病に倒れた清盛を救うため、京の六波羅(ろくはら)にある屋敷へと向かいます。これまでは穏やかな物語が続いていましたが、ここから一気に恐ろしい展開に。清盛を苦しめているのは、清盛が今まで負かしてきた政敵たちの怨霊だったのです。舞台のあちこちから立ち昇るスモークに、うなされながら刀で切り付けようとする清盛。泰親は陰陽の術で怨霊の姿を暴きます。照明が落とされ、低く不気味な声が会場に響き渡りました。「清盛ぃ~…」 三人の怨霊が清盛を地獄に引きずり込もうと近寄ってきます。何と言う恐ろしさでしょうか。ヒュ~ドロドロ…と聞こえるような奏楽も効果抜群。

その直後、勇ましい奏楽と共に再び幕が開きます。清盛の死から4年、壇ノ浦。二位の尼が登場し、平家一族の命運もこれまでと悟り、自ら海へと身を投げます。ドドドドド…。冒頭の場面を思わせる雰囲気で、波に飲まれるような舞、そしてゆっくりと倒れ込む二位の尼。切なげに鳴り渡る笛が始まり、幕が開くとそこには、厳島の大鳥居をバックにたたずむ清盛の姿が。ゆっくりと立ち上がった二位の尼は、清盛の元へと向かい、静かに幕が閉じました。

三女神の一人、市杵島姫は「神霊を斎祭る(いつきまつる)島」という意味を持っていることから、「いつきまつる」…「いつくしま」と呼ばれるようになったと伝えられています。また「厳島」のクライマックスにおいて、平時子は「慈(いつく)しみ 夫婦互いに思い馳せ 想い重ねる 朱(あけ)の鳥居よ」と歌い、夫、清盛の元に身を寄せます。普段はおそらくほとんどの方が「宮島」と呼ばれていることと思いますが、「厳島」の背景にはこんな物語があったんですね。「平家物語」など歴史の影響か、いいイメージで語られることの少ない平清盛ですが、海外との貿易に力を入れ、国の繁栄を図ったという一面も忘れてはなりません。何より広島に住む私達にとって、世界遺産にまでなった厳島神社を崇め、今日まで残した功績はもっと多くの方に知ってもらいたい事だと思います。逆に言えば、広島に住んでいるからこそ、身近な観光地としての「宮島」なのかもしれませんが、この神楽をきっかけに、「厳島に行ってみようかな」など、より興味を深めていただくことが、この演目に携わった方々に向けた最高の賛辞になるのではないでしょうか。そして今回の「厳島」の上演が最後ではなく、あくまで始まりであり、今後広島神楽を代表する演目となるよう、私達ファンも応援していければと思います。

2010,09,07 Tue 23:50
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佐伯鞍職は、厳島に住んで無いですね。現在の大竹市辺りに住んだとされる豪族で、厳島に人が居住するのは、ず~っと後代になってからであると言われております。
| 脚本家 | EMAIL | URL | 10/09/09 14:31 | U4EPaMDU |
9月5日に広島市のALSOKホールで「ひろしま夏の芸術祭 メインコンサート」が行われました。昨年は神楽とオーケストラのコラボ「オロチ」が上演されましたが、今年のメインは創作神楽「厳島」でした。この演目は企画・構成を石井誠治さん、台本・脚本を石丸賢太郎さん、演出を崎内俊宏さんがそれぞれ担当され、北広島町の琴庄神楽団による上演でした。「ひろしま夏の芸術祭」のテーマは「出会う。生まれる。響きあう。」ということですが、この「厳島」もいろんな方々との出会いから生まれ、そしてこの日に団員さんとスタッフと多くのお客さんによって響きあったよう感じました。今回の特派員報告は二部構成で、注目の「厳島」は後半でたっぷりご紹介したいと思います。

まずは川北神楽団「安達ヶ原」から舞台はスタート。阿闍梨祐慶(あじゃりゆうけい)という山伏がお供を連れて安達ヶ原を訪れますが、そこで恐ろしい目に遭ってしまいます。しかし前半に大活躍したのはやっぱり剛力さん。上機嫌で歌いながら登場し、あとは面白い小話やアドリブ、そして体を張ってお客さんを笑わせます。中でも後で上演される「厳島」のあらすじを紹介した話が逸品でした。まずは船に乗って島に渡り、そこに鹿が三匹現れ、水族館に行ってみれば今は閉館中でやってない…という、宮島観光のようなストーリーを紹介してくださいました(笑)。
そんな剛力さんも、恐ろしい悪狐の餌食となってしまいます。最初は姫の姿で現れますが、あっという間に恐ろしい面へと変化し、最後には…なんとリボンをつけた可愛らしい子狐
となって登場。もちろん大狐
も現れ、舞台いっぱいに暴れまわってくれました。そして後半は弓の名人の三浦介と上総介が登場。息がピッタリと合った舞を披露し、威勢よく狐との戦いへと突入。パワフルに動き回る狐に、機敏な動作で立ち向かい、ついに矢を命中させます。「伝統を受け継ぐ」というテーマでの上演でしたが、山伏、チャリ、姫、神、狐…と、いろんな種類の舞が詰まっており、そういった深いところでも楽しめる演目だったと思います。

続いては原田神楽団「大江山」。丹波国大江山に住む酒呑童子を、勅命を受けた源頼光が退治するという、もはや説明不要といっていいくらいの人気演目ですね。まずはいきなり大江山の鬼たちが登場し、紅葉姫に襲い掛かります。いかにも恐ろしげな鬼たちの動き、そしてかよわい姫のやられ方、そこに奏楽さんが舞台の雰囲気を作り上げ、一つの場面が見事に完成しました。いつの間にか見る側を物語に引き込むという技、これも神楽の持つ魅力の一つだと思います。そして源頼光をはじめとする神三人が登場すると、ここで早くも大きな拍手が
。頼光といえば神楽の中でも代表的なヒーローですが、この拍手は会場のみなさんがしっかり応援されているように感じました。豪華な衣装に身を包み、颯爽と舞っていく三人の姿はとてもカッコよかったですね!
続いて姫の舞、こちらは打って変わって寂しげな雰囲気。「とと様恋しや、母ぞ懐かしや」と歌い、赤い布を洗うような動きでなめらかに舞う姫の姿に、思わず見入ってしまいます。そしてついに頼光たちと酒呑童子らが対峙。まずは問答での勝負です。派手な見せ場ではありませんが、言葉の言い方、緩急の流れ、感情の表現など、伝統芸能に加えた個人芸の見せ所でもあります。童子らを酒に酔わせたところでついに岩屋へと切り込む頼光たち。
これまでの流れがいよいよ頂点へと近づき、舞の激しさと勇壮なお囃子にグイグイと引き込まれます。「深化する神楽」、何度見てもその面白さは尽きるところがありませんね。
以上、前半2演目のご紹介でした。「その2」もお楽しみに!

まずは川北神楽団「安達ヶ原」から舞台はスタート。阿闍梨祐慶(あじゃりゆうけい)という山伏がお供を連れて安達ヶ原を訪れますが、そこで恐ろしい目に遭ってしまいます。しかし前半に大活躍したのはやっぱり剛力さん。上機嫌で歌いながら登場し、あとは面白い小話やアドリブ、そして体を張ってお客さんを笑わせます。中でも後で上演される「厳島」のあらすじを紹介した話が逸品でした。まずは船に乗って島に渡り、そこに鹿が三匹現れ、水族館に行ってみれば今は閉館中でやってない…という、宮島観光のようなストーリーを紹介してくださいました(笑)。

続いては原田神楽団「大江山」。丹波国大江山に住む酒呑童子を、勅命を受けた源頼光が退治するという、もはや説明不要といっていいくらいの人気演目ですね。まずはいきなり大江山の鬼たちが登場し、紅葉姫に襲い掛かります。いかにも恐ろしげな鬼たちの動き、そしてかよわい姫のやられ方、そこに奏楽さんが舞台の雰囲気を作り上げ、一つの場面が見事に完成しました。いつの間にか見る側を物語に引き込むという技、これも神楽の持つ魅力の一つだと思います。そして源頼光をはじめとする神三人が登場すると、ここで早くも大きな拍手が
以上、前半2演目のご紹介でした。「その2」もお楽しみに!
2010,09,06 Mon 20:16
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広島県の主催事業ですので、DVDの販売予定はありません。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
| 管理者 | EMAIL | URL | 10/09/07 14:34 | /39ePPLY |
今回のDVDは発売されますか?
| 安芸人 | EMAIL | URL | 10/09/06 20:35 | nsczOl92 |
7月25日は千代田開発センターで「月一の舞」が行われました。今回のテーマは「大江山への道」ということで、ファンの方にもわかりやすい企画だったと思います。源頼光と四天王、そして大江山の酒呑童子という有名なキャラクターが、4演目にわたって活躍しました。それではご紹介します。

まずはあさひが丘神楽団「山姥」から。頼光四天王の一人、坂田金時誕生の物語です。直接大江山とは関係ないかもしれませんが、この後に上演された中でも、金時の風貌は誰が見ても普通とは違うとお気づきになるでしょう。その辺りも含めた金時の物語、そして頼光の武勇をしっかりと見ることができます。山姥の、ゆっくりと不気味さを漂わせながらの舞に対し、後の金時となる怪童丸は荒々しさの中に幼さ、ヤンチャさを感じる舞。寝込みを襲われながらも、慌てることなく冷静に迎え撃つ頼光の勇姿もカッコよかったですね!そして合戦の中、ひと際印象的だったのは、持っていたマサカリにすべてを賭けるかのような怪童丸の力強さではなかったでしょうか。激しい戦いの後は、悲しい母子の別れの場面が待っています。戦後、芝居や劇の要素を取り入れた新作神楽の魅力の一つがこういった場面ではないかと思いますが、物語に感動を覚えるのもこの演目の特徴ですね。

そして舞台は京の都へ。綾西神楽団「戻り橋」は、大江山の鬼人、茨木童子が大暴れを繰り広げます。冒頭からいきなりその茨木童子が登場し、あっという間に老婆へと変化。その見事な早変わりは誰でもだまされ、そして餌食となってしまうように思わされます。そしてその餌食となってしまうのが…そう、傘売り善兵衛さん。いろんなネタあり、客席との会話ありで楽しませていただきました。中でも茨木童子の化身に、まったく役に立たないような超ミニ傘を差し出したのが最高でした(笑)。そしてこの後は化身の巧みな変身術に釘付け。奏楽さんも一緒になって、面が変わったのと同じように場の雰囲気を変えておられたように思います。上演後に「一生懸命舞いたい」という挨拶もありましたが、最後の合戦はそんな団員さんの思いが強く伝わってきました。渡辺綱とマサカリを持った坂田金時が、茨木童子と一戦を交えます。火がつきそうな激しい舞に、掛け声と大きな身振りで盛り上げる大太鼓の方が印象的でした。

東山神楽団「戻り橋後編」は、茨木童子の左腕を、渡辺綱が切り取る場面からスタート。姫と鬼の面を素早く変える演出と盛り上がる奏楽で、一気に物語の世界へと引きずり込まれます。豪華な刺繍のある衣装で合戦を舞う綱の姿、普通の演目では見られないもので、新鮮な感じがしますね。また鬼が持っている赤い傘も印象的で、この演目ならではの見所が序盤からしっかり楽しめます。戦いの後は場を落ちつかせるかのように、渡辺綱の一人舞があり、そして源頼光が登場。ただ強いだけでなく、実際には武士としてはかなり高い位まで出世した頼光ですが、ここはそんな気高さも感じられる場面だったと思います。いったん落ち着いたかと思えば、次は酒呑童子と茨木童子が白妙を襲う場面に。一つの演目にこれだけたくさんの見所や展開があるのも、新舞の魅力の一つですね。まんまと腕を取り返し、さらに大江山へと逃げ去った鬼たち。最後の頼光と綱の舞は、必ず退治してやる!といった勢いを感じるものでした。

そしていよいよクライマックス。浜田市の上府社中「大江山」が始まりました。怪童丸の面影が残る坂田金時、「戻り橋」で活躍した渡辺綱。そして四天王を従え、鋭い眼差しでひと際凛々しさを感じる源頼光。この三人が登場するだけでも見応えありで、さらに決戦が近づいてくるというワクワク感も覚えました。勇ましい神の舞の後は、やわらかな姫の舞。見られた方も印象的だったと思いますが、両手に長い布を持って自在に操りながらの舞は、思わず「お見事!」と声をかけたくなるほど。そして姫の案内でついに鬼の岩屋へ辿り着いた頼光たち。「うお~」と唸り声を上げながら五匹の鬼が出てくる所は、会場からもどよめきが。頼光と童子の流れるような問答に続いて酒宴が始まりました。気分をよくした鬼は「都で流行りの歌を歌え」とリクエスト。すると綱が手拍子しながら歌い始めたのはなんと「お魚くわえたドラネコ…」のフレーズ!!これには意表を突かれました(笑)。他にもアドリブともとれるような「…酔うた。」という童子のつぶやき?もあり、今まで見たことのない面白い場面になっていました。もちろんこの後に決戦となるんですが、これで一気に場の雰囲気を変えて、壮絶な戦いの舞が繰り広げられます。とてもスケールの大きい神楽を見せていただいたような気がしましたね。
以上、7月の月一の舞「大江山への道」でした。来月は高校生のみなさんによる特集が企画されています。どうぞみなさんお越しください!

まずはあさひが丘神楽団「山姥」から。頼光四天王の一人、坂田金時誕生の物語です。直接大江山とは関係ないかもしれませんが、この後に上演された中でも、金時の風貌は誰が見ても普通とは違うとお気づきになるでしょう。その辺りも含めた金時の物語、そして頼光の武勇をしっかりと見ることができます。山姥の、ゆっくりと不気味さを漂わせながらの舞に対し、後の金時となる怪童丸は荒々しさの中に幼さ、ヤンチャさを感じる舞。寝込みを襲われながらも、慌てることなく冷静に迎え撃つ頼光の勇姿もカッコよかったですね!そして合戦の中、ひと際印象的だったのは、持っていたマサカリにすべてを賭けるかのような怪童丸の力強さではなかったでしょうか。激しい戦いの後は、悲しい母子の別れの場面が待っています。戦後、芝居や劇の要素を取り入れた新作神楽の魅力の一つがこういった場面ではないかと思いますが、物語に感動を覚えるのもこの演目の特徴ですね。

そして舞台は京の都へ。綾西神楽団「戻り橋」は、大江山の鬼人、茨木童子が大暴れを繰り広げます。冒頭からいきなりその茨木童子が登場し、あっという間に老婆へと変化。その見事な早変わりは誰でもだまされ、そして餌食となってしまうように思わされます。そしてその餌食となってしまうのが…そう、傘売り善兵衛さん。いろんなネタあり、客席との会話ありで楽しませていただきました。中でも茨木童子の化身に、まったく役に立たないような超ミニ傘を差し出したのが最高でした(笑)。そしてこの後は化身の巧みな変身術に釘付け。奏楽さんも一緒になって、面が変わったのと同じように場の雰囲気を変えておられたように思います。上演後に「一生懸命舞いたい」という挨拶もありましたが、最後の合戦はそんな団員さんの思いが強く伝わってきました。渡辺綱とマサカリを持った坂田金時が、茨木童子と一戦を交えます。火がつきそうな激しい舞に、掛け声と大きな身振りで盛り上げる大太鼓の方が印象的でした。

東山神楽団「戻り橋後編」は、茨木童子の左腕を、渡辺綱が切り取る場面からスタート。姫と鬼の面を素早く変える演出と盛り上がる奏楽で、一気に物語の世界へと引きずり込まれます。豪華な刺繍のある衣装で合戦を舞う綱の姿、普通の演目では見られないもので、新鮮な感じがしますね。また鬼が持っている赤い傘も印象的で、この演目ならではの見所が序盤からしっかり楽しめます。戦いの後は場を落ちつかせるかのように、渡辺綱の一人舞があり、そして源頼光が登場。ただ強いだけでなく、実際には武士としてはかなり高い位まで出世した頼光ですが、ここはそんな気高さも感じられる場面だったと思います。いったん落ち着いたかと思えば、次は酒呑童子と茨木童子が白妙を襲う場面に。一つの演目にこれだけたくさんの見所や展開があるのも、新舞の魅力の一つですね。まんまと腕を取り返し、さらに大江山へと逃げ去った鬼たち。最後の頼光と綱の舞は、必ず退治してやる!といった勢いを感じるものでした。

そしていよいよクライマックス。浜田市の上府社中「大江山」が始まりました。怪童丸の面影が残る坂田金時、「戻り橋」で活躍した渡辺綱。そして四天王を従え、鋭い眼差しでひと際凛々しさを感じる源頼光。この三人が登場するだけでも見応えありで、さらに決戦が近づいてくるというワクワク感も覚えました。勇ましい神の舞の後は、やわらかな姫の舞。見られた方も印象的だったと思いますが、両手に長い布を持って自在に操りながらの舞は、思わず「お見事!」と声をかけたくなるほど。そして姫の案内でついに鬼の岩屋へ辿り着いた頼光たち。「うお~」と唸り声を上げながら五匹の鬼が出てくる所は、会場からもどよめきが。頼光と童子の流れるような問答に続いて酒宴が始まりました。気分をよくした鬼は「都で流行りの歌を歌え」とリクエスト。すると綱が手拍子しながら歌い始めたのはなんと「お魚くわえたドラネコ…」のフレーズ!!これには意表を突かれました(笑)。他にもアドリブともとれるような「…酔うた。」という童子のつぶやき?もあり、今まで見たことのない面白い場面になっていました。もちろんこの後に決戦となるんですが、これで一気に場の雰囲気を変えて、壮絶な戦いの舞が繰り広げられます。とてもスケールの大きい神楽を見せていただいたような気がしましたね。
以上、7月の月一の舞「大江山への道」でした。来月は高校生のみなさんによる特集が企画されています。どうぞみなさんお越しください!
2010,07,26 Mon 23:39
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中川戸神楽団「板蓋宮」は、奈良県明日香村にその舞台があります。歴史の授業

そして原田神楽団「大江山」、これはもちろん京都府にある大江山が舞台です。紹介映像では山中に残された「鬼の足跡

大塚神楽団「悪狐伝」は先に上演された梶矢神楽団「山伏」と同じく、金毛白面九尾の狐が登場します。しかし「山伏」で福島県の安達ヶ原が紹介されたのに対し、この「悪狐伝」は栃木県の那須野ヶ原が舞台となります。これは「山伏」という演目が、安達ヶ原の鬼婆と那須野ヶ原の悪狐の物語を一緒にしているためで、ここが「悪狐伝」との大きな違いとなります。それぞれの地を訪ねればその違いは一目瞭然ですね。さて九尾の狐に負けず劣らずの活躍、十念寺の珍斉和尚さん。きっと楽しみにされていた方も多かったことでしょう!一言しゃべれば客席がドッと沸き、また玉藻前や奏楽さんも苦笑い

そして最後は上河内神楽団「紅葉狩」。舞台となった信州戸隠山は長野県にあります。神代の昔に手力男命が投げ捨てた大岩がこの地に落ちて戸隠山となった、というエピソードはこれまで何度かご紹介しましたが、さて「天の岩戸」の舞台と言えば?いくつかの説はありますが、代表的なのはやはり宮崎県の高千穂でしょうね。ということは、手力男命は宮崎から長野まで岩戸を放り投げたことになりますね!さすが力持ちの神様です…。
RCC神楽スペシャル、伝説の地を訪ねて。ほとんどの演目がみなさんにお馴染みのものだったと思いますが、こういった企画で改めて見てみると、随分と新鮮な印象を受けられたのではないでしょうか。神楽に限らず、「わからないから面白くない」「わかるから面白い」と感じることは多々あると思います。ファンのみなさんがご自身だけでいろいろ調べようというのはそう簡単なことではないかもしれませんが、今回のイベントでわかったことや新しい発見がきっとあったはず。新しい演目、派手な場面を求めるだけでなく、神楽や伝説に興味を持っていただければいいなと感じた、今回のイベントでした。
2010,07,20 Tue 22:10
新着コメント
KAGURA FAN さん、コメントありがとうございます。
2階席だと舞手さんの顔とか面がよく見えないですよね。
スクリーンが役立ったようですね!
これから活用方法がいろいろ考えられてくるかもしれません。
またコメントお願いします。
2階席だと舞手さんの顔とか面がよく見えないですよね。
スクリーンが役立ったようですね!
これから活用方法がいろいろ考えられてくるかもしれません。
またコメントお願いします。
| 特派員Y | EMAIL | URL | 10/07/22 23:18 | QQdyFAoo |
当日2階席で鑑賞しました。
スクリーンでのアップはいいですね!
演目の解説もわかりやすくでよかったですよ!
ナレーションと写真での紹介でしたが、動画もあればもっとよかったかも?
伝説の地をめぐるツアーも魅力的ですね!
今後の展開に期待しています!
スクリーンでのアップはいいですね!
演目の解説もわかりやすくでよかったですよ!
ナレーションと写真での紹介でしたが、動画もあればもっとよかったかも?
伝説の地をめぐるツアーも魅力的ですね!
今後の展開に期待しています!
| KAGURA FAN | EMAIL | URL | 10/07/21 11:59 | PF8WiEZ. |
7月18日は広島市の広島国際会議場フェニックスホールで「RCC神楽スペシャル」が行われました。今年のテーマは「伝説の地を訪ねて」ということで、上演された神楽それぞれの物語の舞台となった地を、ステージに設置されたスクリーンで紹介するという試みがなされました。いつもは上演前のあらすじだけですが、それに映像を加えることによってみなさんに物語がよりわかりやすくなってのではないかと思います。今までおぼろげだったところが詳しくわかれば、またさらに神楽が面白く感じるという効果もあったことでしょう。神楽イベントに慣れ親しんだ方でも、今回のステージはかなり新鮮だったのではないでしょうか。また神楽の上演中には、その模様をビデオ収録されていた(有)キャビネットさんの映像がそのスクリーンに映し出されていました。特にアップの映像などは、後ろや2階席のお客さんにもよく見えて便利だったのではないでしょうか??
まず最初の儀式舞は中川戸神楽団「神迎へ」。四人の舞手さんによる厳かな舞が淡々と繰り広げられます。そして儀式舞独特の楽のリズムに神楽歌。時折フワリと舞う袖も、儀式舞ならではの風情が感じられると思います。そして神楽を構成する大事な要素である陰陽五行思想が色濃く反映されているのも、こういった舞の特徴ですね。舞手さんの動きを見ても、右から左へ、左から右へ…ではなく、東から南へ、春から夏へ。我々日本人の祖先が大事にしてきた思いや願い、それらが伝統芸能という形でしっかりと今日まで伝承されているということ。まさに神楽は地域にとって宝物と言えると思います。こういった魅力があるからこそ、文明が進んだ現在でさえも、神楽は多くの人を魅了するのだと改めて感じました。

そして富士神楽団「滝夜叉姫」。福島県いわき市にある恵日寺(えにちじ)は、天慶の乱で敗れた平将門の三女である瀧姫の物語が残されています。一族でただ一人生き残った瀧姫は、この寺に辿り着き、八十余歳の生涯を閉じるまで一族の冥福を祈り続けたと伝えられているそうです。この神楽でも、鬼と成り変わってはいますが、やはり全編を通じて父の無念を晴らしたいという滝夜叉姫の思いが強く感じられます。恨みを晴らしたいが女の自分には力が足りない…そんなか弱い姫の様子、そして妖術を授かり鬼と化した様子、舞い方はもちろん細かい面の早変わりでも見事に演出されていたと思います。その変化の様子も、大きく映し出されたスクリーンでみなさんしっかりとご覧いただけたのではないでしょうか。

続いて梶矢神楽団「山伏」も、福島県がその舞台として紹介されました。こちらは恐ろしい安達ヶ原の鬼婆
以上、前半3演目のご紹介でした。「その2」で残りの4演目をご紹介しようと思います。
2010,07,19 Mon 00:11
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